筋膜のエネルギー
私たちが歩いたり、走ったり、ジャンプしたり、ダイナミックな動きをするとき、身体と地面の間には実に興味深い相互作用が起こります。この相互作用は1,000分の1秒にも満たない時間ですが、人間の効率的な動作に必要なエネルギー源を提供しています。接地の際、身体は衝撃を受けます。その衝撃は足底(時には手のひら)で感知され、すぐさま位置エネルギーに変換されます。
次の動作は、次の一歩を効果的に踏み出すために非常に重要です。神経系は、足が地面に着く前から衝撃に備えています。この準備は、スティフネス(筋の硬さ)と呼ばれるものによって達成されます。
動作効率にはスティフネスが必須条件
足と足首の筋が硬いほど、接地時に受ける衝撃の位置エネルギーを迅速にロード/アンロードすることができるようになります。実際に、足と足首の硬さがランニングスピードに影響を与えることが研究で明らかになっています。2002年のBrettらによる研究では、スティフネスの値が最大だった短距離走者の加速が最も速いことが分かりました。
では、どうすれば足の接地時に必要なスティフネスを得られるのでしょうか?
その答えは、筋肉と筋膜の関係にあります。
筋膜の緊張=スティフネス(筋の硬さ)
骨格筋の構造
骨(Bone)
筋周膜(Perimysium)
血管(Blood vessel)
筋線維(Muscle fiber)
筋束(Fascicle)
筋内膜(Endomysium)
筋外膜(Epimysium)
腱(Tendon)
すべての筋肉には、周囲の腱や靭帯と相互につながった筋膜の網目組織があります。この筋膜の網目は、筋肉全体の周囲(筋外膜)から筋束の周囲(筋周膜)、そして個々の筋線維の周囲(筋内膜)までつながっています。それぞれの筋膜の層には筋線維が存在します。それらの関係は動的であり、動作の効率化に必要なものです。
私たちの身体がスティフネスを作り出す方法は、等尺性収縮(アイソメトリック収縮)です。アイソメトリック収縮は、この筋膜の網目状の部分、特に筋周膜に緊張をもたらします。筋周膜がスティフネスやエネルギー伝達に重要なのはなぜでしょう。それは、筋線維芽細胞が最も集中しているのがこの筋膜の層であることが研究で明らかになっているからです。筋線維芽細胞は、弾性エネルギー伝達のための収縮力を持つ細胞です。
このアイソメトリック収縮が筋膜の緊張につながるプロセスをNigg博士は「マッスル・チューニング理論」と呼び、EBFAは「筋膜の緊張」と呼んでいます。
フォームローリングを超越した筋膜トレーニング
健康・フィットネス業界は、筋膜やトリガーポイントのリリースを前面に押し出して素晴らしい成果を残してきましたが、ここで歩みを止めるわけにはいきません。筋膜は、ただフォームローリングをすればいいだけでなく、注意も必要です。
最適な動作効率を得るためには、筋膜を鍛えて緊張やスティフネスを作り出す必要がありますが、この硬さは足が地面に着く前にあらかじめ作動していなければなりません。さらに、筋膜は弾力性に富み、ゴムバンドのような働きをする必要があります。これは、太極拳やジャイロトニックなどのリズミカルな動きや、BAREワークアウトで行うエクササイズでトレーニングできます。
筋膜の緊張について、こちらのビデオでもう少し詳しく説明しています。
※ビデオは英語版です。
#barefootstrong を実践しましょう!
エミリー・スプリカル博士
参考文献
Brett et al. Leg strength and stiffness as ability factors in 100m sprint running, J Sports Med Phys Fitness. 42(3): 274 – 281. (2002)
Schliep, et al. Active fascial contractility, Structural Integration 2006
寄稿者:Dr.エミリー