“座ることは新しい喫煙である Sitting is new smoking.”

この言葉は、アメリカの研究病院メイヨークリニック所属の医学博士、ジェームズ・A・レヴィン博士の言葉です。同氏は、その言葉の後にこのように続けます。

「座ることは喫煙より危険であり、エイズより多くの人を殺し、パラシュートで降下するよりも危ない。」
「私達は座ることで死に至るのである。」

ある研究結果では、タバコを一本吸うことは、寿命を11分減らす。としていますが、2008年に行われたオーストラリアの研究によると、25歳以降、テレビを1時間視聴するごとに寿命が21.8分短くなる。と説明しています。

このような数値からも、同氏の「私達は座ることで死に至るのである。」というショッキングな説は、大げさなものでは無いと考えられるのではないでしょうか?

私達は、生活の様々な局面で座って過ごしています。

朝食を食べながら「座る」
通勤中に「座る」
仕事中に「座る」
コンピューターの前で「座る」
夕食を食べながら「座る」
スマートフォンを操作しながら「座る」
テレビを見ながら「座る」
 

原始の時代では、生活の大部分を動くことに費やしてきました。食べ物を食べるため、生活を行うためには、身体を動かす必要があったことは想像に難くありません。そのような経緯もあり、人間の身体は、そもそも「身体を動かすことによって機能する」という前提の構造となっています。

例えば、心臓は身体に血液を送り出しますが、実は心臓の力だけでは身体の隅々に血液を送り出し、また心臓にその血液を戻すだけの力はありません。身体の関節を動かし、筋肉が収縮を繰り返してポンプの役割を果たすことで、心臓から送り出された血液を心臓に戻すのです。

「ふくらはぎは第二の心臓」という言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか?

こういった血流の不全一つをとっても、身体を動かさずに座ったままの姿勢でいることがどれだけ身体に悪い影響を与えるのかイメージができると思います。

クリープ現象とは

クリープ(Creep)は、物体に持続的に応力が作用すると、時間の経過とともに歪みが発生する現象のことを指す工学用語ですが、脊柱バイオメカニクスの権威である、スチュアート・マクギル博士は、このクリープという言葉を用いて、同一の姿勢を維持し続けること(つまり座りっぱなしなど)による、身体への影響を次のように説明しています。

20分間同じ姿勢を取りつづけた体の組織は、伸び切って菲薄化した状況から、一時的に元通りに動かせなくなってしまう。(クリープ現象)。

つまり、長時間座った姿勢を維持してしまうと、そこから身体を正しく動かすことができなくなってしまう。その現象は、たった20分間同じ姿勢を維持することで発生してしまうのです。

座り過ぎの皆さんが運動を行う際のポイント

対処法はすごく簡単です。30分のデスクワークを行うごとに、少なくとも2分間動きましょう!
本日はかんたんなエクササイズを合わせて紹介します。

①背骨をまっすぐのまま、身体を45°前に倒します。

 

②そこから肩甲骨を寄せるように、腕を引きましょう!
 ※ペットボトルなどを持つと良いです。

注意ポイントは、肩甲骨を寄せた際に、肩がすくまないようにすることです。120回を目安に行ってみてください!

重要なのは何をやるかよりも、なぜやるか。

本日紹介したような、こういった情報は、インターネットで検索すればたくさん見つけることができます。「デスクワークは身体に悪いです。」「ちょくちょく身体を動かしましょう。」「トレーニングの方法はこうやるのが効果的です。」ぜひ、それらを調べて実践してみてください。

このコラムでは、具体的な運動の仕方というよりは、「なぜそれらを行わなければいけないのか。」ということについて少しでも知っていただけたら大変うれしいです。なぜやるかを知ることは、何をやるかを知ることよりも、強力にあなたを動機づけしてくれます。あとは実践あるのみです!

是非皆さんの大切な、一つしか無い身体を、しっかりとコンディショニングしてあげてください! 

You are all athletes for life.(人は皆、人生という舞台を生き抜くアスリートである。)

Enhance your life Performance(ライフパフォーマンスを高めましょう!)

参考Kelly StarrettDeskbound: Standing Up to a Sitting World2015
参考Stuart McGillLow Back Disorders: Evidence-Based Prevention and Rehabilitation2005 

 

公式HPはこちらから