【脂質】
上記の蛋白質の摂取のお話をする際に避けて通れないのが脂質のお話です。
その中でも特に患者さんからよく聞かれるのは≪肉類≫です。
「蛋白質をしっかり摂れと言われても、動物性の脂質は動脈硬化を進めるから、お肉ってあんまり食べちゃいけないんじゃ・・・?」という質問をよく受けます。
確かに「肉を食べると動脈硬化が進む」ということはテレビや健康雑誌などでも取りざたされていますが、実はこれ、あまりきちんとしたエビデンス(科学的証拠)はありません。
ここの場でその良し悪し・優劣を討論してもしょうがないので、2つ、新しい知識を皆さんにご提供しておきます。
≪肉類≫には飽和脂肪酸が多く含まれる、と言われています。肉の脂=飽和脂肪酸、と言わんばかりの表現ですが、実は、肉類に含まれる脂成分の割合(脂肪酸分画)は、約50%はオレイン酸が占めています。オレイン酸とは、オリーブオイルに多く含まれている、健康に良い、そして動脈硬化や心臓疾患を予防する効果が期待できるアレです。となると、お肉食べたほうが、動脈硬化って、予防できるのでは?という考え方ができてきます。さらにもう一つ。そのそもそもの飽和脂肪酸が動脈硬化を進め、脳心血管疾患を増やす、と長きにわたって言い伝えられてきましたが、これも近年の研究で否定されつつあります。
この≪肉類≫と十把一絡げにくくって考えることがそもそも乱暴のようです。
先にも述べたとおり、肉類に含まれる脂成分の割合は、その生育環境・与えられた飼料などによってだいぶ異なってくるようです。僕も調べた限りでは、日本のブランド牛と名の付く牛肉はそろってこのオレイン酸が高値を示しており、おいしさの秘訣だったりもしているみたいです。確かに、良い環境で良い飼料で大事に育てられた牛の肉と、そうでない牛の肉とで、その質が異なってくるのは、当然と言えば当然です。
また、肉自体の問題に加え、加工肉となると、その製造過程や添加物・保存料などの兼ね合いで、健康に与える影響も異なってくると思われますが、食事の実態調査でそこまで踏み込んで検証されたものがないのが実情です。
現段階で言えることとしては、≪肉類≫に関しては、適切な環境で育てられた畜産からの食肉については、牛でも豚でも鶏でも、その脂身も含め、必要以上に制限をすることなく、美味しくありがたくいただいてOK、という理解でよいと思います。
その他の脂質として、≪魚類≫の脂質は、EPA(エイコサペンタ塩酸)・DHA(ドコサヘキサエン酸)などは、サプリメントになるくらい、健康に対してよい働きする、ということは周知のところかと思います。≪魚類≫は蛋白質としても、脂質としても、是非ともしっかり摂りたい食材です。
植物由来の脂質は一般にコレステロールを含まないので健康にいい、と考えられがちですが、植物由来であれば何でもよいのではなく、魅力的とされるのは〖n-3系(ω-3)系不飽和脂肪酸〗です。
具体的にはえごま油、コメ油、亜麻仁油などが是非摂りたい脂質になります。
上述の≪魚類≫由来の脂質もこちらに分類されます。
それ以外にお勧めの脂質としては、一番有名なところでは前述のオリーブオイルになりますでしょうか。
また少しタイプが異なる脂質ですがココナッツオイルは中鎖脂肪酸、というエネルギーとして利用されやすい脂質を豊富に含んでおり、糖質を控えるときの強い味方、となり、当院では無理なく食事管理・食事是正・糖質制限を行う場合に活用しています。
【その他】
緑黄色野菜などは全般しっかり摂りたいところです。その中でも葉野菜の類はビタミン豊富で、総じて炭水化物・糖質は少なめであり、嵩増し効果などもあり、お勧めです。
一方、根菜類は食物繊維を多く含み、好ましい面がある一方で、糖質も多めに含むことが多く、糖質接種を控えたい人にとっては少し注意が必要です。
果物類は、ビタミン類やそこからの抗酸化作用など、健康増進に魅力的な面がたくさんあるものの、最近のものは美味しい=糖度が高くなっているものが多く、必然的にたくさん食べると太りやすくなるので、体重管理をしたい人にとっては少し注意が必要です。
海藻類・キノコ類・発酵食品などなどは腸内環境改善効果が期待でき、それぞれ超おお勧め食材になります。
総括として・・・
『バランスよく食べましょう』・・・一般栄養指導でよく言われるセリフです。
ただ、体重超過されている方、体脂肪・内臓脂肪が多く蓄積されている方、というのは、すでに体型・体組成的にアンバランスな状態になっています。そのアンバランスなところにバランスの良い食事内容で改善を図っても、まんべんなく減るか、まんべんなく増えるか、結果変わらないか、というのは、目に見えていると思いませんか?
アンバランスを解除・是正するには、それと対をなすように敢えてバランスを崩したメニュー構成に工夫する必要があります。
その人にとって、必要なものはしっかり多めに摂る、不要なもの・足りているものについては控える、ただ単純にそれでよいのです。
自分に何が足りているのか、何が足りていないのか、しっかり見極めていきましょう。