今回は、心疾患を持っている人・心臓の具合の悪い人は運動どのような感じでやっていけばよいのか、というところをお話ししていきたいと思います
といっても、「〇〇運動がいいですよ」とか「△△運動をすれば心臓が元気になりますよ」というものは残念ながらありません。
※そのような内容を期待されていた方には、ごめんなさい、先に謝っておきます。
確かに、巷にはそのような文言・宣伝コメントが載せられている書籍や動画コンテンツがあふれています。ただ、そもそも心疾患と一括りに言っても、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患、心臓弁膜症、不整脈などなど、病態は様々です。そしてそのそれぞれに対し、気をつけるべきポイント、求めたい効果、ケアすべきリスクも当然異なってきます。加えて持っている合併症・併存疾患・生活習慣病(高血圧・糖尿病・脂質異常・慢性腎臓病など)などによって、その多様性はより一層複雑なものとなります。
心臓疾患を持っている人の運動のリスク
こういったことを背景とし、『心臓が悪い人は、家でおとなしくしておかないと、心臓に負担がかかって、病気が悪くなってしまう』『運動なんかリスクのほうが高くてやめておいたほうが良い』『運動は控えて、外出を控えて、おとなしくしておくに限る』なんていうイメージをいまだにお持ちの方が多いことかと思います。
何かこれって、現在のコロナ禍における過度な自粛要請において言われていたことに似てますね。
確かに心臓疾患を持っている人の運動は、持っていない人に比べるとリスクは高いのは事実です。ただ、だからと言って、運動をせず、活動量が減少し、筋力体力が低下すれば、心臓疾患に悪影響を与えるのみならず、免疫力低下からの感染症リスクの増大や、認知機能に対しても悪影響を与えることが、近年明らかになり、また問題視されています。
適切な運動療法・運動習慣
適切な運動療法・運動習慣の獲得が、その人の生命予後を延長したり、健康寿命を延伸したりすることは、様々な研究・論文で明らかとされています。
では何が適切な運動療法なのでしょう?
どういった運動療法が適切なのでしょう?
それこそが今回のテーマです。
(そこが聞きたかったんじゃ!という方、お待たせしました!)冒頭でも述べたとおり、シンプルにこれだ、と言ってあげることは残念ながら不可能です。その中で重要視するポイントをいくつかお示ししておきます。
心臓が悪い、ということで、病院にかかっておられる方であれば、多くの場合血液検査や心エコー検査(心臓超音波)を受けられていると思います。
その中で、血液検査であれば、BNPもしくはNT-proBNP、という項目があればチェックしてみてください。これが高値であれば、心臓に少し負担がかかっているということです。病態によってもともとだいぶ高値を示している方も多いので、その絶対値を見るのではなく、値の推移・変化を大事に見ます。
ここが異常高値であったり、上昇傾向である場合、心臓に負担がかかっている、と考えられます。また心エコー検査(心臓超音波)によってわかる心機能の代表的なパラメータとして、左室躯出率(LVEF、EFとも表記されることあり)が挙げられます。大体正常で60-70 %であり、これが低いと、ザックリ言うと、心臓が全身に血液を送り出す能力が低い、ということを意味します。
有酸素運動と心拍数の目安
心臓に問題を抱えている、とされていて、BNP(NT-proBNP)が高値の方、LVEFの低値の方、には有酸素運動がお勧めです。具体的にはウォーキングとか、エアロバイク、水中ウォーキングなどが挙げられるでしょうか。
ただウォーキングといっても、そのスピードや歩幅、坂道や階段の有り無しなどによって、筋肉や関節・心血管にかかる負担はそれぞれです。
正確な有酸素運動レベルの設定にはCPX(心肺運動負荷試験)という専門の検査を行う必要がありますが、これは保険診療で行われる心臓リハビリテーションにおいて良く行われている手法です。そこまでいかなくても、自分の脈拍数や年齢などからちょうど良い脈拍数などを導き出す計算式などもあります。
運動強度=運動係数kなどと表されることもある
高齢者の場合:0.3-0.4
若年~中年者:0.4-0.6
身体活動が高い場合:0.5-0.6
自身の自覚症状として分かる目安としては、①軽く汗ばむ程度、②普段より少し息遣いが荒くなる程度、③会話は成り立つレベル、くらいが有酸素運動レベルとされています。
ここまで有酸素運動についてお話してきましたが、後編では筋力トレーニングについてお話していきます。