現代社会において、加齢に伴い骨格筋量が減少してくる「サルコペニア」が男女問わず問題となっています。なかでも大腿部の筋力低下は、いろいろな病気の有病率が高くなると警鐘が鳴らされており、ぜひとも対策を講じていきたいところです。

当院では「心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン」に準拠し、運動処方の原則として有酸素運動と同様に、レジスタンストレーニング(筋トレ)においても頻度・強度・時間・種類・運動量・漸増を活用し、患者さんの筋力・体力に合わせて取り組んでいます。

筋肉は心臓にとってとても心強いサポーターですから、是非とも鍛えていきたいところです。また筋肉量が多いということはエネルギーが効率よく燃焼するようになりますから、全身の代謝が亢進し、肥満やメタボ改善にもつながり、動脈硬化の予防や狭心症・心筋梗塞などの心臓疾患の予防にも役立つことが期待できます。

レジスタンストレーニングは種目・やり様によって、単一の部位だけでなく、複合的な部位の筋肉や関節を同時にもしくは連動させて行います。結果、単に筋力が上がったり、筋肉量が増加する、といった効果だけでなく、体の動かし方・姿勢・重心の載せ方など、日常生活に直結する動作においてもその効果が得られます。

 

 

 

 

 

例えば立ち座り動作がスムーズに行えたり、立位状態(立ち仕事)が楽に感じられたりなど、運動機能がアップし、疲れにくい身体へと変貌する実感が得られたりすることも期待できます。導入時は「運動の正しい方法や感触を覚える」や「筋と筋の間のコーディネーションの改善」などを目的として強度を軽め(例えば30%1RM)にし、10~15回を繰り返し丁寧に行うこと、などが推奨されています。そこで今回は代表的な下肢のトレーニング「スクワット」についてご紹介したいと思います。

 

スクワットについて

スクワットは多関節種目であり、単関節種目より筋体積の大きい大筋群が動員されるため、筋肥大効果の高いトレーニングとなります。また、多関節種目は、大筋群とともに小筋群も鍛えられるため、単関節種目より多くの筋肉を強化できます。そして、同じスクワット、と言っても、取り組み方を変えることにより、遅筋線維をメインに働きかけるトレーニングになる場合と、速筋線維をメインに鍛えることになる場合に、区別して行うことができます。

逆から言うと、それを意識して、今どちらを鍛えているのか、を考えて行うことが重要です。下背部の脊柱起立筋など日常生活で体重を支える抗重力筋は持久力のある遅筋線維が多い傾向にあります。一方ヒラメ筋は遅筋線維が多く、ふくらはぎは「第二の心臓」とも言われており、ここはしっかり筋肉をつけておきたいところです。

心疾患がある方や高齢者の方は速筋線維が減少し、遅筋線維に置き換わっていることが多い、と言われています。そのような場合、トレーニングを行う際には、速筋線維の刺激にもつながるように工夫・意識をすることが重要です。スクワット一つとってみても、バリエーションは様々で取り組み方で負荷のかかり具合や、負荷のかかる場所が変わってきます。日常生活では無意識に3次元の動きをしています。当院で患者さんにトレーニングを指導する際は、いろんなパターンをご紹介しながら、自分のどこの筋肉が動いているのか、どこが鍛えられているのか、など意識・実感してもらいながら丁寧に取り組んでもらい、それが日常生活に活かせるように指導介入することを大切にしています。

 

寄稿者:八王子みなみ野心臓リハビリテーションクリニック

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